・患者さんに治療説明をしても伝わらない
・スタッフに伝えたはずなのに伝わっていなかった
という経験がある院長先生もいるでしょう。この場合、相手にわかってもらえるまで丁寧に繰り返し説明していませんか?しかし、何回も説明をすると相手に警戒心や嫌悪感を持たれるリスクがあり、信頼関係が崩れるきっかけにもなりやすいです。
そこで今回は、説明しても伝わらない理由や相手に伝わりやすい方法について解説していきます。
説明しても伝わらない原因
一生懸命に説明しても伝わらないのは、次の2つが関係しています。
・人間はそれぞれ異なるスキーマを通して情報を受け取っている
・人はどうでもいいことを忘れる
それぞれについて解説していきます。
人間はそれぞれスキーマを通して情報を受け取っている
スキーマとは、今まで経験してきたことや育ってきた環境や分化、得てきた情報によって生み出される先入観や思い込みのこと。私たちは相手の話をそのまま脳にインプットするわけではなく、みんな異なる先入観や思い込みを通して言葉から情報を受け取っています。
たとえば、犬といっても小型犬のような可愛い犬というイメージを持った人もいれば、かっこいい大型犬のような犬をイメージする人もいます。これは生まれ育ってきた環境で犬に対する先入観がみんな違うからです。
患者さんに「自費治療の〇〇がおすすめ!」と伝えても理解してもらえないのは、患者さんと院長のスキーマが違い、自費治療に抱くイメージが違うために起きます。
仮に患者さんが「自費治療の良さがわかった!」となったとしても、あくまで相手のスキーマを通して物事の見たものがわかったということであり、自分の頭のイメージがそっくり100%相手に伝わっていると言うことではありません。
人はどうでもいいことを忘れる
人は全てのことを記憶することができません。自分が必要だと思うこと、興味のあることだけを無意識に優先して記憶して、どうでもいいことは忘れてしまう性質があります。
たとえば、スタッフに仕事を頼んだ場合、院長は自分がこれは大事だと思っているからこそ相手に伝えたことをよく覚えていますが、言われたスタッフは別に大事ではないと感じることもあるため、うっかり忘れたり間違えて内容を覚えたりすることが起きるのです。
できるだけ相手にうまく伝える方法
相手に自分の伝えたいことを100%伝わることはありませんが、できるだけ相手にうまく伝わる方法は下記のようにいくつかあります。
・俯瞰して相手の立場になって考える
・結論だけでなく理由を伝える
・相手をコントロールしようと思わない
それぞれについて詳しく解説します。
俯瞰して相手の立場になって考える
たとえば、誰かに道を教える時には相手がわかるように有名なコンビニの名前や目立つものの名前を出しながら説明すると思います。他にも、動画で理解しやすい人もいれば、紙に書いてあるイラストのほうがわかりやすいと感じる人もいます。
相手に伝わるか?面倒に感じないか?どういう人か?の質問を自分に投げかけてから、相手が理解しやすい方法はどれかを考えて言葉にするといいでしょう。
また、人は忘れるということを前提にして患者さんに資料を渡す、スタッフに仕事を頼む際にはできるだけメモを渡したり「この前頼んだ仕事だけど…」と、たまに声かけをしたりするのも効果的です。
結論だけでなく理由を伝える
人は「なぜ?」「どうして?」という理由を知ると納得してしまう性質があります。そのため、相手に伝えるときには結論だけでなく、理由を一緒に伝えると相手の心に残りやすくなります。
たとえば、スタッフに「診療前に医院の前の歩道を掃除して」と言っただけでは納得感がありません。一方で「医院の前の道がキレイだと患者さんが入りやすいし、好印象を持たれるから掃除して」と「なぜ?」「どうして?」の部分を相手にきっちりと伝えると、相手は納得して行動する傾向です。
相手をコントロールしようと思わない
どちらか一方でも相手を思い通りに動かそうと考えている限り、コミュニケーションは成り立たず、信頼関係も築けない傾向です。相手をコントロールしようとは思わず、院長の思いが伝わるように辛抱強く関わっていくことが大切になります。
まとめ
人はそれぞれ、自分のスキーマを通して情報を整理し理解するため、お互いに100%理解しあうことは難しいでしょう。しかし、相手によって伝える方法を変えたり、理由を付け加えたりすることで院長が本当に伝えたいことが伝わるようになります。
自分の伝えたい気持ちを優先したくなりますが、相手に伝わるためには相手の立場や環境などに配慮した言葉選びが何より大切です。
歯科衛生士 帆保智子