歯科医院を経営していく上でキャンセルは頭を抱える問題です。
キャンセルは、そのまま治療中断につながる危険信号といえます。
このキャンセルにも様々な理由が存在しています。
健全なキャンセルならまだ良いのですが、そうではない場合は医院としての対策が必要になってきます。
ここでは、健全ではない理由のキャンセルに焦点を当てて考えてみます。
不満によるキャンセル
健全ではないキャンセルで一番根深い理由になります。
不満があると患者さんは積極的にキャンセルを行います。
ですから、予約管理システムなどのキャンセル対策の仕組みを整えても、効果が現れない可能性が高くなります。
患者さんが不満を抱く理由もさまざまですので、対策も大変です。
例えば、スタッフの態度や言葉遣いが問題なら医院全体で接遇に関するトレーニングが必要になります。
外部セミナーの受講や外部講師を招くなどの対策がありますが、まずは、院内ミーティングを通じてスタッフが現状に対して「問題である」と認識する必要があります。
この認識が無いとなかなか解決しない問題になります。
医院のキャンセル率が一般的にいわれている率より高い場合、改善が必要なのかもしれません。調べたところ一般的なキャンセル率は10~15%といわれています。
患者さん自ら治療が必要ないと思うキャンセル
痛みもなく、とりあえず食べることに不自由を感じない状態に起こりがちな理由になります。食べることに不自由がないのですから、患者さん自身に歯のトラブルが生じない限り治療中断が続く可能性があります。
また、歯のトラブルが生じても、なんとなく後ろめたい気持ちから他の歯科医院を探す可能性が高いでしょう。
対策は情報提供に尽きるでしょう。
いまの状態、次の治療説明、放置した場合のリスクなどを患者さんに伝える必要があります。
簡単なチラシなどにできれば、歯科医だけでなく、スタッフも対応できるので有用ではないでしょうか。
その際、治療別で作成できれば良いですね。
例えば、根管治療中、仮歯装着後、歯周病治療中などキャンセルが起こりやすい場面をピックアップするとよいでしょう。
他の用事によるキャンセル
他の用事によるキャンセルも多く発生しています。
日々生活していると重要な用事が発生することはあります。それ自体は避けられないので仕方ないことです。
しかし、問題となることとして重要ではない用事を優先されることです。
例えば、
友人にランチを誘われた
明日でも良い所用を優先した
などです。
このような行動をする理由は、歯医者に行くことが重要ではないと感じているからです。痛みがある、食事に不自由がある状態では患者さんは受診を優先しますが、日常生活に不自由が無いと間違った判断をする可能性があります。
ではどのように対策すればよいでしょうか?
先ほどと同じ情報提供がポイントになります。
治療を放置すればどのようなリスクがあるのか、次回の処置の説明などをしっかりと伝えることが必要です。
忘れていた
そして最後に「忘れていた」キャンセルについて触れておきます。
忘れていたという理由は、健全ではないですが、不健全とも言えません。
特に歯科医院に不満などはない状態に発生するキャンセル理由になります。
この対策は、予約日以前の対応になります。予約があることを患者さんにリマインドするわけです。
連絡手段は電話、メール、SNS、予約管理システムの機能、予約アプリなどがあります。医院が取り入れやすい方法を複数持つことが効果的でしょう。
そしてさらに考慮すべきことがあります。
それは、「忘れていた」キャンセルは無断キャンセルであるということです。
患者さんは悪気もなくただ忘れていたということになります。
ですから、無断キャンセルが生じた時の対応は、医院でルールを決めておくことが重要です。
例えば、
無断キャンセル発生から〇分後に電話を入れる
その時の話法を決めておく
になります。
単に忘れていて、電話がつながれば次回の予約が取れます。
この初期対応が無ければ、患者さんが治療中断する可能性が極めて高くなるでしょう。
まとめ
キャンセルといっても、さほど気にする必要が無く許容すべきもの。
医院として対策を講じないと、その後も医院経営に影響を及ぼすもの。
同じキャンセルでも後者のキャンセルが多いと、医院経営は安定した成長が困難になることが予想されます。
キャンセル理由の把握とともに患者さんへの情報提供がキチンとなされているか?
また、患者さんからご意見を貰うことがあるのか?
それを共有できる環境は整備されているか?
今一度見直してみるのも良い機会だと思います。
歯科衛生士 N.H.