歯科医院では女性スタッフが9割、男性の院長が1人の体制のところがほとんどです。
そのため、女性スタッフの考えていることや気持ちがわからないと悩んでいる院長先生も多いのではないでしょうか?
女性と男性では、基本的に考え方が違います。そのことを理解せず接していると、スタッフとの関係性が悪くなり、最悪の場合には辞めてしまうことも。
そこで今回は、女性スタッフとのコミュニケーションの図り方について紹介していきます。
出世したくないと思う女性の心理
医院に勤めている年数が長いスタッフには、役職をお願いすることもあるでしょう。主任や副主任、受付主任など、さまざまな役職がありますが、女性は出世したくない気持ちの強い傾向があります。
そもそも、人は男女問わず誰でも、夢や目標を持ちながら仕事をしている場合が多いです。この夢や目標を言い換えると「欲求」とも言えます。
「理想の自分を実現したい」「仕事で認められたい」といったことも欲求段階の一つですが、男女では異なる心理があります。
例えば、周囲に認められたい!と頑張って働いたことが院長の目に留まり、役職と言った形で出世を与えられることは、嬉しいことのはずです。
しかし、女性にとっての出世は複雑で、あえて出世を避けるケースも少なくありません。
その理由としては、周囲から浮いてしまう存在になることが挙げられます。
今までは他のスタッフ同様の立場で仕事をしていたはずが、役職を与えられたことで立場が一緒ではなくなるためです。
また、女性は結婚や子育てといった人生のターニングポイントもあり、将来のことを考えて出世を選択しないこともあります。
このように、成功することを怖がったり自分への不利益を想像して、臆病になることを「成功回避動機」といいます。
この成功回避動機は、男性より女性の方が強いことがアメリカの心理学、ホーナイの心理実験によりわかっています。
そのため、スタッフに役職を与える際に勤務年数だけで決めるのは、おすすめできません。成功回避動機が強い女性の場合には、役職を与えられたことがストレスになりやすいです。役職を与える場合には、本人の意見や周囲のスタッフの反応を聞いてからにしましょう。
仕事の任せ方で信頼関係が崩れる?
女性スタッフに仕事を頼んだままにしていませんか?女性に仕事を頼んだ後、任せっぱなしにすると、不満が出やすい状況になります。
なぜなら女性は、感情で動く生き物だからです。細かいことによく気づき、感情が湧き起こりやすいという、女性特有の性質を理解しておきましょう。
例えば、手のかからない女性スタッフに仕事を任せて問題ないだろうと放っておくと「私はどうでもいいんだ」「1回声をかけられただけで無視された」と感じる人もいます。
院長としては、安心して任せられるから声をかけないのですが、スタッフとしては声をかけられないことで、放っておかれていると感じやすいのです。
また、女性は作業を器用にこなすことはできても、作業中は「この作業が正しくできているか」と自信がもてない傾向があります。
「ここまでやったことの正否」や「次の作業の正しいやり方」が気になるのです。こうした不安を解消するためには、ひとつ一つのステップごと確認しながら教えていくと、自分のやっていることに自信が持てるようになります。
その際には、アドバイスや褒め言葉などを熱心に声かけされるほど、※ピグマリオン効果が高まります。
つまり、熱心に声かけをされたことで、スタッフは自分の力を最大限に発揮しようとし、良い成果を得られる可能性が高くなるのです。
※ピグマリオン効果とは、人は期待されるほど意欲が引き出されて、その期待に応えようと成果をだすことです。
女性はコミュニケーションを大事にする
イギリスの経済学者のアダムスは「人は相手との公平さを維持、確保しようとする」という提唱を残しています。この説を公平理論と言います。
簡単に言うと、自分と同僚を比較した場合に自分のほうが優遇されていると思えば、意欲的に仕事をし、不遇を感じたら手を抜いてしまうということです。
特に、コミュニケーションが少ない男性院長と女性スタッフの間では誤解が生じ、すれ違いを生み出してしまうのが「公平性。」
院長がどんなに公平にしても言葉が少ないと誤解をうみ、女性スタッフに不公平だと思われてしまいがちです。
女性はコミュニケーションを大切にします。女性にとって言葉にすることは難しくなく、言葉が足りない院長にイライラしやすいです。
ただ、女性が求めているコミュニケーションは、難しいことではありません。ちょっとした感謝や気遣いの言葉、状況確認の言葉をかけてほしい。
つまり、仕事の流れの中で自分を気にかけてもらっていることを確認したいのです。「いつもありがとう。」「頼んでいる○の件は進んでいる?」などの声かけをするだけでスタッフは安心し、院長の印象が良くなります。
まとめ
女性と男性では仕事の仕方や価値観が大きく異なり、それ故にコミュニケーションが上手くいかないケースも少なくありません。
男性は組織や仕事の内容を重要視し、女性は人を重要視する傾向があります。だからこそ、女性にとって院長との関係性が仕事へのモチベーションに繋がりやすいのです。
今回紹介した女性とのコミュニケーションのポイントは以下の通りです。
● 役職を与える場合には、本人の意見を取り入れる
● 頼み事をした時には、まめに声掛けをする
● 感謝を伝え、言葉でコミュニケーションを取る
上記のポイントを活用して、女性スタッフと良い関係性を築いていきましょう。
歯科衛生士 帆保智子