突然のスタッフの離職は防ぎたいものです。離職を完全になくすのは難しいですが、離職率を下げることはできます。
その対策のひとつが、声かけです。特に、相手の心理的安全性を高める声かけが大切です。
なぜなら、職場を可能な限り心理的安全性を高い環境にすることで、離職率が下がる傾向にあるからです。
そこで今回は、離職率を下げる声かけについて紹介していきます。
この記事では歯科医療でよくある場面での声かけを紹介します。離職率を下げたい院長先生は是非この記事を参考にしてください。
心理的安全性とは?
そもそも、心理的安全性とは自分の考えや意見を他のメンバーの誰でも、率直に言い合える状態のことです。
特に日本人は、意見をして相手との信頼関係が壊れたり、否定されたりするのを防ぐために沈黙する傾向があります。
その結果、自分の意見が言えない職場環境の居心地の悪さが原因で離職する人も少なくありません。
一方で、心理的安全性が高い職場はスタッフが安心し、意欲的に働く傾向があるため離職率の低下に繋がります。
つまり、気軽にスタッフが主任や院長に声をかけられるような職場が理想的であり、心理的安全性が高い職場といえます。
離職率を下げる声かけ
ここからは、歯科医療でよくある場面での声かけの方法を紹介していきます。
新入社員が入社してきた時
新入スタッフは、不安や緊張でいっぱいです。そんな彼らに「最初の1年は見習いみたいなものだから」と言っていませんか?
1年目はできなくても当然というニュアンスで、相手を安心させようとして出た言葉かもしれません。
このフレーズも悪くはありませんが、より安心してもらいたい場合には「頼りにしているよ。」と伝えるのがおすすめです。
最初の「見習いみたいなものだから」という表現は「君は未熟だ」「最初は戦力として期待していないから(文句を言わず働け)」と言うメッセージとして受けとられる可能性もあります。
そうなると、心理的安全性は損なわれ、1年目ならではの新鮮な意見を言うよりも対人関係のリスクを避けるために沈黙してしまいます。
しかし「頼りにしているよ。」と語りかければ、新人スタッフは先輩やリーダーからの期待を感じて頑張ろう!と思う傾向が強いでしょう。
新人スタッフを未熟者として見るのではなく、伸び代が豊かだと見て「何かあればカバーするから、遠慮なくやりたいようにやってね。」と声をかけると、さらに相手の心理的安全性が高まって、のびのびと働くようになるでしょう。
繁忙期にスタッフから泣き言を言われた時
管理職の人ならば、スタッフから泣き言を言われることもあるでしょう。チームみんなが多忙を極めている時につい、スタッフが泣き言を漏らすこともあると思います。
そんな時は「給料をもらっているんだから文句を言わずに働いて」と返してしまいがちです。
この言葉のマズイ点は2つあります。1つ目はメンバーの泣き言を全く受け入れていない点。スタッフの相談や報告は、一旦受け止めるスタンスが重要です。
どんな内容であっても、一旦受け止めるほうがチームの心理的安全性が高まるためです。
2つ目は「給料をもらっているんだから」という一言。給料はスタッフにとってどうすることもできない事象です。いわば人質を取り上げて、もっと働けと強制しているのです。
給料の話を出されれば、スタッフは何も言えなくなります。反論のできない言葉で相手を追い込むコミュニケーションは心理的安全性を大きく棄損することになります。
スタッフの泣き言であっても、まず院長は受け止めてください。その上で「チームのために踏ん張ってくれてありがとう、一緒に乗り切ろう。」などと伝えましょう。
不満が出るほど大変な状況の中で働いてくれているため、まずはスタッフの働きに感謝をします。
また、一緒に乗り切ろう!と寄り添う表現を使うことで、不満や泣き言が生み出すネガティブな空気をポジティブに変えることができます。
大変な時こそ「一緒に!」「チームみんなで!」といった助け合いを想起させる声かけをすると、一体感が生まれて相手のやる気を引き出す効果が期待できます。
休職中のスタッフが復帰した時
やむを得ない事情で、長い休みを取らなければならないこともあると思います。産休・育休なども同様になります。
久しぶりに戻ったスタッフはさまざまな不安を抱えているため、気持ちを和らげる声かけが大切です。
例えば「休職中とは状況も変わっているから、早く覚えてね。」「穴を開けたぶん、ちゃんと取り戻してね。」といった声かけは禁物です。
穴と言う単語に象徴されるようにこれらの言葉には「休職=ネガティブ」なものと言う意味が含まれています。
このような声かけをするリーダーは無意識のうちに「休職者=迷惑をかけた人」というメッセージを発信しているのです。
これでは、長く休みをもらって申し訳ない…と思っている復帰スタッフは心を痛めてしまいます。
また、このやりとりを見ていた他のスタッフも長期休暇を取得しづらく、復帰しづらい職場だと感じて、転職を検討するかもしれません。
一度でも一緒に働いた仲間は、ノウハウや知識も備わっています。また、長期間休んでいた分、職場を違う視点で見ることができ、既成概念にとらわれない考えをもたらしてくれるかもしれません。
だからこそ、休職明けのスタッフには「すぐに戦力になれるかどうか」を意識させるよりも「ここにいてもいいんだ」を再認識してもらいましょう。
「待っていたよ。また一緒に働けて嬉しい」といった率直なメッセージは、相手を安心させて仕事への活力になるでしょう。
まとめ
声かけは、相手の受け取りかた次第で意味が変わってくるため、難しいかもしれません。しかし、相手のことを考えた気遣った言葉は、目の前の人に届くはずです。
声かけをする時には、まず相手を安心させるための言葉選びを意識すると良いでしょう。
心理的安全性の高い声かけをして、スタッフが安心して長く働ける職場環境を整えていきましょう。