飲食店は離職率が高いことで有名ですが、近年のスターバックスジャパンの離職率は4.8%と、かなり低いことで有名です。何十種類もの飲み物や新商品の作り方を覚えるのは簡単なことではありません。
また、飲食店なので接客の仕方も厳しいイメージがありますが、スタッフが辞めずに続けられるのはどうしてなのでしょうか?
そこで今回は、スターバックス独自のスタッフ教育について解説します。スタッフが定着しない、離職率を減らしたいと悩んでいる院長はぜひこの記事を参考にしてください。
スターバックスの人材育成の特徴
スターバックスの人材育成には、次のような特徴があります。
● 研修時間をかける
● 仲間との距離が一定
● 一人ひとりの役割が明確
それぞれについて、詳しく解説します。
研修時間が多い
一般的な企業の研修期間は2〜3日で、多いところでも1〜2週間ほどです。しかし、スターバックスの研修期間は、トータルで40時間。期間にすると、約1ヶ月にも及びます。従来は80時間を費やしていましたが、動画の導入もあり40時間に短縮していると言われています。
この40時間の研修では、スターバックスの理念でもある「お客様にコーヒーを通じて感動を提供する」を実現するために、一人ひとりが考え行動する大切さを学びます。また、会社や上司からの指示だけをこなすのではなく「仕事を通して自分は何をしたいのか」「スターバックスで働くことで何を得たいのか」などを考えて仕事に挑むことで意識を高め、やりがいを見つけていきます。
いっぽうで、歯科医院でも理念や治療方針などはありますが、スタッフは理解していますか?離職率の多い歯科医院では「何となく知っている」「知らないまま働いている」というスタッフが多い印象です。
理念や方針を知り、行動することは歯科医院への愛着に繋がります。つまり、理念や方針を知らずに仕事をしているのは作業であり、医院への愛着がないため、嫌なことがあればすぐに辞める傾向があるのです。
たとえば、地域におけるかかりつけ医院を目指し、予防歯科を中心として歯を守るという理念を持っているとします。受付と歯科衛生士とでは達成のやり方は違い、歯科衛生士の場合には歯を失うリスクや毎日の歯磨き、定期的なメンテナンスの大切さを伝えることが理念を達成することになるでしょう。
他にも受付の場合は、患者さんの帰り際に医院のパンフレットを渡す、手書きのボードに予防についての豆知識を書くなど、歯科医院の理念や方針は同じでも立場によって達成のやり方は変わります。
それぞれ立場は違いますが、目指す先が同じだと連帯感が生まれ、同時に歯科医院への愛着が沸く傾向です。その結果、スタッフの一体感が生まれて、お互いに頑張ろうという前向きな意識で仕事に取り組めるようになるでしょう。
仲間との距離が一定
スターバックスで勤務している店員同士は雰囲気が良く、テキパキと働いているイメージが定着しているのは、仲良しすぎないためです。お互いが一定の距離を保っているからこそ馴れ合いがなく、ほどよい緊張感を保ちながら働けるのです。
一人ひとりの役割が明確
良い接客と言っても正解はありません。スターバックスでは、どんな接客をすべきかをそれぞれが考えて、責任をもって仕事をすることを教えられます。とはいえ、自分で考えてそれぞれ仕事をしてほしいと言われても慣れるまで時間がかかるかもしれません。
そこで、まずはスタッフの得意なことに注目して仕事を頼むのがおすすめです。たとえば、コミュニケーション能力が高く、いつも患者さんと楽しそうに話しているスタッフには患者さん向けのお話し会を提案してみましょう。
他にも、イラストが得意なスタッフには院内のポップ作成を頼むのも良いでしょう。頼まれた仕事に対して責任感が生まれ、仕事に対して意欲的になりやすいです。こういった経験を積み重ねると「自分はどんな働き方がしたいのか」「次に自分ができることは?」など、働く意識が高まったり、自分で行動したりするようになるでしょう。
まとめ
長く同じ歯科医院で働き続ける人は少ない傾向です。しかし、歯科医院に愛着があり、自分で目標をもって働く人は定着しやすいです。そのため、まずはスタッフが得意なことでできる仕事を提案してみるのがおすすめです。やりがいや達成感がある仕事を楽しいと思い、歯科医院への愛着も湧くようになるでしょう。
歯科衛生士 帆保智子