スタッフの中には話しベタで、「患者さんに指導や説明などをするのが苦手…」という方もいると思います。しかし、伝え方のコツさえ掴めば、自分の伝えたいことを患者さんに正確に伝えられます。
そこで今回は、話しベタでもわかりやすく伝える方法について解説します。また、この記事は、院長はもちろん、話ベタなスタッフを指導する際の参考にしてください。
相手が退屈そうになったら、話すのをやめてみる
相手が退屈そうにしていると、焦って「とにかくもっと何か言わなくては…」と、話し続けてしまいます。しかし相手の集中力がなくなるのは、話し方にリズムが感じられないことが原因。
そのため、ずっと話し続けず「間」をとるのを、意識しましょう。間には、3種類あります。まず1つ目が、理解の間。相手がそれまでに話したことを整理して、理解するための必要な間になります。
文章でいうと「、」「。」などの句読点で、1、2秒の間をあけます。この間によって、これまで話したことを理解してもらうのです。
2つ目は、強調の間です。重要なことをいう前後に「ため」を作ります。キーワードの前後に間をつくることで、重要な部分が際立ちます。
3つ目は、集中の間。これは聞き手に考えてもらうことで、注意をひきつけるための間です。相手に質問を投げかけ、考えてもらう時間をとります。
質問後に3秒以上の間をおくと、相手は自分なりに答えを考え始めます。すると、答えを知りたくなり、その後の話しを集中して聞く傾向があります。
沈黙に耐えられない場合は、心のなかで「1、2、3…」とカウントすると良いでしょう。話しベタだと、沈黙を避けなくては…と思いがちですが、むしろ話し続けるほうが良くない結果になりがちです。
しっかりと間をとることで、あまり話さなくても伝えたいことが浸透しやすいでしょう。
主張の衝撃をクッション言葉でやわらげる
自分の伝えたいことが相手にとって、負担になりそうな場合や問題点の指摘などの場合は、そのまま言うと少しぶしつけだったり、気分を害してしまったりするかもしれません。そんなときは、言葉の衝撃をやわらげるクッション言葉を入れてみましょう。
たとえば、お願いするときは以下のクッション言葉を先にいいます。
「できましたら」「お忙しいとはおもいますが」「お疲れのところ恐縮ですが」
質問する時は「差し支えなければ」「すでにご存じかもしれませんが」といった言葉がクッションになります。ただし、クッション言葉を多用しすぎると弱々しい印象につながります。
そのため、特にお願いしたい部分や強調したいところだけに使うのがおすすめです。また、患者さんへのブラッシング指導で指摘、反論するときは次のように伝えると良いでしょう。
たとえば「この歯磨きの仕方で大丈夫?」と患者さんに言われた場合。「時間がかかりすぎるという不安があると思います。でも、確実に歯垢や汚れが取れて、虫歯や歯周病予防になるので、短い時間でも良いのでやってみませんか?」
上記のように伝えると、相手に不快な印象を与えにくくなります。
クッション言葉は、「相手に対してあなたの疑問や不安などを理解していますよ。」というメッセージでもあります。言いにくいことを言うのは気が引けるものですが、言い方ひとつでグッと受け入れられやすくなります。
相手に理解して欲しいことを1つに絞り込む
患者さんへの歯磨き指導で具体的な行動が決まったら、その行動をとってもらうために、その中でも「特に理解してもらいたいこと」を決めます。ここでは、あれもこれもと欲張らず、1つだけに絞りましょう。
この1点を決めておくことで、説明に一貫性とインパクトが出ます。そもそも、話しベタな人は話の軸が定まっていないことが多いため、あちこちに話しが飛んでしまいがちです。
ここで相手に行動を取ってもらうために、理解する必要があることをしっかりと考えると軸が定まって、無駄な説明を省くことができます。
たとえば、下記のように目的と理解してほしいことを分けると、伝えるポイントが明確になり、話をまとめやすくなります。
目的:〇〇さんのプラークコントロールを30%までにする
理解してほしいこと:プラークコントロールが低下することで虫歯や歯周病リスクの低下
まとめ
話しベタの人は話す際に緊張して、焦ってしまいがちです。歯科医院では、患者さんと会話することが多く、話さないという選択はできません。
だからこそ、患者さんに伝わるように工夫する必要があります。今回紹介した3つのコツを使って、落ち着いて患者さんに話してみてください。
歯科衛生士 帆保智子