自費治療を提案した際に、理由をつけて断られることも少なくありません。しかし、患者さんのネガティブは、ニーズ(ここでは求めること)に直結しているケースもあります。
つまり、患者さんが自身のネガティブを解消できる、ネガティブ以上のメリットがあると感じれば自費治療を選ぶ可能性が高まります。そこで今回は、患者さんのネガティブを自費率アップに繋げる方法について解説します。
自費治療を断る時の4つのネガティブ
患者さんは、主に次の4つのネガティブを理由にする傾向があります。
1. 金額
2. 効果
3. 持続性
4. 優位性
ネガティブの対処法
ここからは、4つのネガティブの対処法について詳しく解説します。
金額
金額を理由に、治療を躊躇する患者さんがほとんどでしょう。特に患者さんが「ちょっと、高いですね…」と言った際には、次のように伝えてみましょう。
歯科医師:「たとえば、Aさんは40万円の机は高いと思いますか?」
Aさん:「高いと思います。」
歯科医師:「では、40万円の家は高いでしょうか?」
Aさん:「40万円の家は安いと思います。」
歯科医師:「私もそう思います。同じ金額なのに物によっては、高いと感じたり安いと感じたりします。40万円の机は、良い木を使っているのかな?と思いますが、同じ値段でも家の場合はボロボロかもしれない、欠陥が多いかもしれないなどの、マイナスのイメージを考えてしまいますよね。先ほど、Aさんに提案したインプラント治療は、机と同じで高いと感じられるかもしれませんが、当院のインプラントは品質が良いものを使っています。また、精度の高く、安心安全な治療を実現するためには、細かい工程を踏んだ治療が必須なため、40万円という治療費になるのです。」
というように、使用する材料が安心安全であり、適切な料金設定であることを伝えます。人は、損をすることを恐れる本能があります。
そのため、使用する材質の価値や保険治療との違いなどを明確にすると、患者さんは安心して自費治療を選ぶ可能性が高まります。
効果
患者さんが「自分には提案された治療の効果がなさそう」と思えば、自費治療を選びません。この場合は、次のように伝えてみましょう。
歯科医師:「Aさんは接客業で、人前で話す機会が多いですよね。仕事が忙しくなかなか歯医者に通えないので、半年に1回ほどのペースで歯医者でのホワイトニングを行うのがおすすめです。自宅でできるホームホワイトニングは、歯の白さをキープしやすいですが、Aさんの仕事の忙しさを考えると、ホームホワイトニングが手間に感じる可能性があります。定期的に歯医者でホワイトニングを行い、歯の白さをキープしていきませんか?」
上記のように、患者さんの生活スタイルに適した治療法を提案します。そうすることで、自分のことを理解した上で治療法を提案しているから効果が期待できると感じ、提案を受け入れやすい傾向があります。
優位性
他の物と比べた時に、歯科治療の優先度が低いと感じると自費治療を選びません。たとえば旅行に出かけるため、他の出費を減らしたいと考えている場合は、下記のような対応が考えられます。
歯科医師:「旅行では、我慢したくないですよね。旅行先で写真をたくさん撮ると思います。笑った時に銀色の被せ物が写っていると、気になるかもしれませんがどうですか?セラミックは自然な歯の白さにできるので、笑顔になった時も見た目の違和感がほとんどなくキレイですよ。」
このように、良い思い出を作るために歯科治療の優先度を上げる伝え方が効果的です。また、美味しい食べ物が食べられる、旅行先でトラブルが起こりにくいなどといった点で自費治療を勧めると、契約まで結びつきやすいでしょう。
持続性
人は、お金を費やした物を長く使いたいと思う傾向があり、長く持たないと思う物にはお金をかけません。そのため、自費治療を勧める際には、実際に提案した材質を使って治療を行った症例写真を見せながら説明するのが効果的です。
長期的に使用できることがわかりやすく、自費治療を選択する傾向があります。
まとめ
患者さんが自費治療を断る理由は金額、効果、持続性、優位性などがあります。患者さんのネガティブと感じている部分を理解し、それ以上のメリットを伝えることで自費治療に繋がる可能性が高くなります。
ただし、患者さんの発言を無視し、何度も自費治療を勧めるのは控えましょう。患者さんの様子をみて、自費治療の魅力を伝えてください。
歯科衛生士 帆保智子