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定期検診やメンテナンスのリピート率を高めるための実践ガイド

2025.11.10

定期検診やメンテナンスのリピート率の向上は、患者の健康を守るだけでなく、歯科医院経営にとっても非常に重要なことです。しかし、患者に定期検診の日程を伝えるだけでは、リピート率はあがりません。
この記事では、定期検診やメンテナンスのリピート率を高めるための方法を解説します。

歯科医院として取り組むべき視点

歯科医院経営において、定期検診やメンテナンスのリピート率向上は極めて重要です。歯科医院としては最初に考えるべきことは、歯科医院全体の仕組みを整え、それぞれの取り組みが統一したルールのもとで運用される体制を作ることです。
具体的な取り組みは以下の通りです。

1. 定期検診の重要性を患者へ説明するためのマニュアルや資料の準備
2. 検診案内を行うためのメールやSMSの送信ツール導入
3. 定期検診を習慣化させるための予約管理システムやポイント制度の整備
4. 来院を忘れた患者への心理的フォローマニュアルの作成

歯科医院経営者や院長は、これらの取り組みを整備・運用するためにかかるコストや業務負担を把握し、スタッフに偏りが出ないよう役割分担を調整しながら、定期的にリピート率をモニタリングして改善策を検討する必要があります。
以下でそれぞれの取り組みについて詳しく解説します。

定期検診の重要性を患者に伝える

患者が定期検診やメンテナンスの重要性を理解するために、歯科衛生士や受付スタッフが診療中に活用する説明用資料を準備します。紙やタブレットで提示できる資料に加えて、患者の過去の治療履歴や口腔内データを整理しておくと、個々の状況に応じた説明が可能になります。
多くの患者に使える説明用資料としては、齲蝕や歯周病の進行図、口腔内の健康状態を比較できる画像などがあります。さらに定期検診の目的や内容、受診間隔の目安をまとめたパンフレットを作成しておくこともおすすめです。

説明は専門用語をできるだけ使わず、患者の理解度を確認しながら具体的に定期検診の重要性を説明します。一方的に説明するのではなく、患者の不安や疑問に柔軟に対応することが求められます。
すべてのスタッフが一定の基準で患者へ説明できるように、歯科医師や歯科衛生士、受付スタッフが協力してスタッフ用の説明マニュアルを作成しておきます。スタッフ用マニュアルの内容の一例は以下の通りです。

・定期検診の重要性を伝えるときの基本フレーズ例(「再発予防のためには3ヶ月ごとの検診がおすすめです」など)
・説明する順番やタイミング(「診療中のどの段階で話すか、会計時に再度案内するか」など)
・患者からのよくある質問への回答例(「痛みがないのに検診が必要ですか?」への回答例など)
・患者の反応に応じた対応例(口腔ケアに消極的な患者へのアプローチなど)

患者への説明資料やスタッフ用マニュアルの作成には時間がかかり、作成ノウハウも必要になります。自院での作成が難しい場合は、歯科コンサルタントなどに依頼してサポートしてもらうとよいでしょう。

定期検診やメンテナンス案内のシステムを整える

定期検診やメンテナンスの間隔は、3~6ヵ月が一般的です。そのため多くの患者が日程を忘れてしまいます。それを避けるためにメールやSMS、ダイレクトメールを活用して検診やメンテナンス日程を案内する仕組みを整えることが大切です。

具体的には、スタッフ全員が同じ基準でシステムを使い、患者対応に一貫性を持たせるために、最初に運用ルールを決めます。たとえば、予約やリマインドの管理方法や誰がどのタイミングで予約情報を登録・確認するのか、予約変更やキャンセルが発生した場合の対応手順などです。また、検診日の何日前にメールやSMSを送るか、返信があった場合の担当者などもあらかじめ決めておきましょう。

次に外部のシステム会社や自院のIT担当者が、各患者の次回の検診日程を把握できるようなシステムを作成しておきます。患者情報の取り扱いやシステムトラブル時の対応方法も決めておけば、スタッフの入れ替えがあっても運用の質を保つことにつながります。

メールやSMSに記載する文章は、歯科医院経営者や受付スタッフが協力して作成してください。内容に検診内容だけでなくセルフケアのポイントなども含めると、患者にとって検診の案内以上の意味を持たせられます。送信後に返信や問い合わせがあったときは、スタッフが丁寧に対応することで来院率が高まることが期待できます。

注意点としては、送信頻度が多すぎると逆効果になってしまう可能性が高いことと、個人情報保護の観点からシステムのセキュリティを徹底しておかなければならないことです。

定期検診を習慣化させるシステムを整える

定期検診を忘れてしまうと心理的な後ろめたさから、以後来院しなくなってしまう患者が少なくありません。そのため、診療時に次回検診をその場で予約できるようにし、予約管理システムを利用して受付スタッフがスムーズに手続きできる環境を整えることが重要です。
さらに来院回数に応じたポイント制度や特典を設定することで、患者のモチベーションの維持が期待できます。来院することでメリットがあると感じてもらえれば、定期検診の習慣化につながります。
具体例としては、一定ポイントが貯まると次回のクリーニング料の割引や歯ブラシなどセルフケア商品と交換です。また、患者の家族が初めて来院した場合にもポイントを患者と家族に付与するすると、家族単位で定期検診に参加してくれることも期待できます。
ポイントや特典が過剰にならないように配慮し、初診の患者が聞いたとしても不公平感が出にくいように設定することが大切です。

定期検診やメンテナンスを習慣化させるための具体的手順

1. 診療中に歯科衛生士が患者のスケジュールを確認しながら次回予約を提案
2. 会計時に受付スタッフが、次回検診日やポイント・特典を伝え予約をしてもらう
3. 予約日の1~2週間前にメールやSMSで案内する

このように3段階で次回の提案を行うことで、定期検診やメンテナンスの習慣化につながります。

来院が忘れた患者への心理的フォロー

来院を忘れた患者には、心理的負担を減らすためのフォローを行います。患者の性格にもよりますが、忘れたことを責めるような対応はあまりおすすめしません。予約を飛ばされ患者を責めたくなる気持ちは理解できますが、患者であると同時にお客様であることを意識することが大切です。何度も予約日を忘れるような患者以外には、普通に対応し来院へのモチベーションを下げないようにしましょう。

予約を忘れて来院しなかった患者には翌日~2日以内に、次回来院への前向きなメッセージを記載したメールやSMSを送信し、次回来院への心理的ハードルを下げます。メールやSMSなどを利用していない患者に対しては電話でフォローしましょう。メールやSMS送信してから1週間~10日経っても反応がなかった場合は、再提案します。

内容は、受付スタッフや歯科衛生士に作成してもらい、院長や経営者が確認してください。ポイントは、来院を忘れてしまったことを責めず、柔らかい文面で患者が来院しやすい雰囲気を作ることです。
具体的な内容の一例は以下の通りです。

「~様、先日はご都合により検診にお越し頂けなかったようですが、お忙しいところかと思いますが、次回の定期検診のご都合をお知らせください。ご都合に合わせて日時を調整いたしますので、お気軽にご連絡ください。」


まとめ
定期検診やメンテナンスのリピート率を安定して向上させるためには、システムを導入するだけでなく、歯科医院全体で運用する仕組みを整え、スタッフ全員が統一したルールのもとで対応することが重要です。

診療中の説明資料や案内メールの活用、来院を忘れてしまった患者への心理的フォロー、ポイント制度の導入などを組み合わせることで、患者が来院しやすい環境を作れます。

これらをマニュアル化して全スタッフに共有させることで、運用のばらつきを防ぎ、患者満足度と信頼性の向上につなげることができます。

医療ライターY.A

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